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玉入れは散々だった。
一個も玉が入らないってどう言うこと?
改めて自分の運動神経の無さには感心する。
プレハブの影に隠れた体育館脇の水道で手を洗いながら、自分に呆れて溜め息をついた。
「――優里さん!」
キュ、と蛇口を捻った時、葵くんの明るい声がした。
私と目が合った途端、小走りで駆け寄ってくる葵くんは子犬みたいで色気がない。
「見たよ、徒競走。ホントに運動神経いいんだね。」
コンクリート造りの水道に浅く座って腰を落ち着ける。
葵くんはその隣に並んで、豪快に顔を洗いだした。
「爽に負けたから2位だけどね。
せっかく見てくれてたから1位とりたかったけど。」
ぷは、と顔を上げて、びしょ濡れのそれを腕で拭う。
(……勘違いじゃなかった。)
葵くんが私を見つけていたことにびっくり。
ぽかんと思考が一瞬停止した。
直後、前髪を水で滴らせながら私をじっと見て、急に慌て出した。
「……いや!運動できるって言った手前!
2位とか3位じゃカッコ悪いでしょ!?」
カーッと赤くなって身振り手振りが忙しそう。
何をそんなに慌てることがあるんだろうか?



