…………。
……いやいや、“キュン♡”じゃないし。
自分の心にスンとなって、急いで気持ちを立て直す。
葵くんが作った甘酸っぱい空気を押し流すように、話題を体育祭に戻すことにした。
「運動神経いいって事は足も速いの?リレーとか出れちゃうくらい?」
「や、それは流石に!遅くはないと思うけど。
優里さんは運動……」
「私ができるように見える?」
真面目で静かな優等生タイプだよ?
間髪入れない返答に、葵くんが可笑しそうにふっと笑みを漏らす。
「1年の冬の球技大会とか、優里さん酷かったもんね。」
「なんで知ってるの!?」
唯一参加した散々なバレーボールの試合を思い出して、大きな声が出た。
「え゛っ……!?
いや、……あんな派手にサーブ空ぶる人、優里さんくらいだったから記憶に残ってるだけだよ。」
ガーン。恥ずかしっ。
めちゃくちゃ不名誉な覚えられ方。
「……言うじゃない。」
私の無様な姿を知ってたこと、特に追求されなくて葵くんは密かに胸を撫で下ろす。
私はと言えば自分の弱点を知られてた羞恥心とカッコ悪さに、優位な立場を取り戻すことでいっぱいだ。
「これで体育祭で葵くんが転んだら、私一生イジり続けるからね?」
「執念深っ。優里さんてたまに子どもみたいになるよね。」
そう言って、楽しそうに笑う葵くんの方が子どもみたいだから。
減点。そう言う前に、チャイムが鳴る。
今日は練習って言うより、
ただの昼休みを過ごしてしまった。



