自分の顎を捕まえていた腕を、葵くんは優しく掴んで引き離す。
「わかった、いいよ?」
ふっと体の力を抜いて、葵くんのアクションを待つ姿勢を見せる。
頬に赤みを残したままの葵くんが、私と視線を合わせるように屈んだ。
「……キスする時は顔の角度、ちょっと横にして変えるんだよ?」
初対面ではそれすらできてなかったから。
「……ん、わかった。」
消え入りそうな声。返事するのもやっとなんだ。
葵くんの大きな手が私の肩にかかる。
抱きしめるでもなく、頬に添えるでもなく。
不器用で精一杯の触れ方。
「じゃ、……するよ?」
吐息混じりの色っぽい声で、色気のない確認。
うっかりふっと噴いてしまった。
「わざわざそういうこと言わないんだよ?
ほんと野暮。減点。あとででこぴんだから。」
「――うん、ごめん。」
言ってすぐ、ぎこちなくゆっくりと顔が近づいてくる。



