「最近なんだか余裕が出てきているようですから。
一気にレベルアップしましょうか。」
にや、と意地悪く微笑んだ顔を見せれば、葵くんがひく、と後ろに下がる。
(うん、これこれ。)
確かな手応えに安心して、一歩二歩と距離を詰めた。
「……レベルアップとは、一体どういう……?」
後退りで逃げ続けた葵くんの背中が、ついに壁で行き止まる。
その瞬間に壁に手をつき、もう一方の手で引いていた顎を捕まえた。
「唇にキス、してみましょうか。」
私の言葉を聞いた途端、葵くんの顔がぶわっと赤くなってヒュッと息を呑む音がハッキリと聞こえた。
顎をしっかり掴んでるから、私から顔を逸らすことはできない。
小刻みに左右に震える目で何度も瞬きをして、なんとか保っているようだ。
できるだけ無機質に。
葵くんが情を無くして踏み越えられるように。
あえて真顔で葵くんを見つめる。
葵くんの目にそんな私が映って、更に唇を凝視するように視線が下がって、声にならない声が息になって漏れ出した。



