君がいてくれて。

「あんまり見たことなかったけれど小児科ってこんな感じになってるんだね〜。」
桜を見たあと、病室に帰るついでに樹くんと小児科の中を探検することにした。
私はあまり病室から出ないから小児科病棟にどんなところがあるか知らなかった。
気になって2人で話していると今回も樹くんがいち早く行動。
本当に樹くんの行動力にはさっきから驚かされる。
「ここは…こもれびルーム?初めて聞いた。」
私たちの病室の1個下の階までくると『こもれびルーム』と書かれた綺麗な部屋を見つけた。
ドアを開けると絵本やぬいぐるみ、ブロックなどが置いてあるエリアと沢山の本が入っている本棚が置かれたエリアが広がっていて何組かの親子が遊んでいた。
「こんな場所があったんだ…。」
「知らなかったな。先生からも一度も聞いた事ないし。」
遊んでいた親子の方たちに挨拶をしながら奥に進んでいくと大きな窓に沿って置かれた緑色のソファーにカメラを持って座っている男の子がいた。
「こんにちは。...ここではあまり見ない顔だね。」
固まっていると男の子が私たちに気づいて声をかけてくれた。
「こ、こんにちは…!えっと、小児科に入院してる方ですか?」
ここにいるってことはそう言う事だよね。
「うん。この階に入院してる。君たち名前は?」
「私は如月優花です…!」
「僕は海原樹!よろしく!」
そう言って樹くんが手を差し出すと男の子は微笑んで手を握り返した。
「よろしく。僕は華崎紘。中学2年だよ。」
「一緒…!」
「2人とも同い年?小児科で同い年の人とあまり合わないから嬉しいな。良かったら仲良くしてね。」
紘くんは小さい時に小児がんになってから転移を何度かしていてこれまでの人生のほとんどの時間を病院で過ごしたらしい。
「えっと、そのカメラって…?」
私はさっきから気になっていた事を紘くんに聞いた。
「あ、これの事?これは父さんからのお下がり。一眼レフカメラなんだけどもう使わないからってもらったんだ。このこもれびルームからの景色が好きで毎日ここからの写真をとってるんだ。」
こもれびルームからの景色は私の病室から見えるものとほとんど同じだったけれど少し高さと角度が違うだけで全然雰囲気が違って見えた。
「写真見る?」
私と樹くんがソファーに座って景色を眺めていると
紘くんは持っていたカメラを持ち上げた。
「いいの?」
「うん。もちろん。趣味程度だからそんなに上手くないけれど良かったら。」
これまで撮った写真を見せてもらうと景色によって顔を変える景色を上手く撮っていてまるで季節がそのまま閉じ込めたようにキレイな写真だった。
「…綺麗…。」
「ホント?そう言って貰えると嬉しいな。」
「趣味程度どころじゃないよ!紘、上手いね!」
樹くんの言葉に私も納得して何度も頷いた。
「父さんがカメラマンしてるんだ。それに病院にいるとやることないしずっと写真撮ってるからね。」
お父さんがカメラマン…!凄い…!
「良かったらまたここで話そう。友達っていた事なかったから仲良くしてくれるとうれしい。」
そう言って立ち上がった紘くん。
時計を見ると午後の4時半。
探検してたから結構時間が経ってたみたい。
「もちろん!っていうか病室にも遊びに来て!僕達、同じところなんだ!602号室!」
「2人が良かったらまた遊びに行かせて貰うね。今日はほんとにありがとう。友達になれて良かった。」
「紘くん…!また写真見せてね…!」
久しぶりにできた友達という存在。しかも2人の男の子。
これから始まる大切な友達との毎日に胸を躍らせながら紘くんに手を振って樹くんと2人で病室に戻った。