君がいてくれて。

「ここの病室から見える景色とってもいいね…!」
「そうなのっ。私、この景色大好き。」
先生が病室を出ていって2人で話していると窓からの景色の話題になった。
話によると樹くんがいた前の病室は少し日当たりが悪く見えるものも駐車場ぐらいしかなかったらしい。
「私、桜が好きなの。だから春の景色が1番綺麗だと思うよっ。」
「桜…。すごく綺麗だよね。桜吹雪ってどんな感じか分からないけど僕、見てみたいんだ。1つの夢…って言うのかな?」
夢…か…。
桜吹雪はもちろん窓からは見たことがある。
だけど1度でいいから桜吹雪の中に入ってみたい。
一面が桃色になるってお母さんが言ってた。
「私は…桜を近くで見てみたい!桜吹雪も窓からしか見たいことないから…!」
きっと病気になるまでは普通に見てたと思うけれど、はっきりと覚えていない。
でも、病気が治らない限り病院からは出られないから
諦めかけてた夢だった。
「…そういえばここの病院の中庭に桜が植えてあったはずだよ。見に行ったことはないけれど先生が言ってたと思う。」
「中庭に?」
中庭って行ったことがないけどどんな所なんだろう。
「うん。僕も行ったことないんだけどね…(笑)」
そう言って樹くんは乾いた笑いをこぼした。
行ってみたいな〜…。
でも…先生許してくれないよねっ…。
「…行ってみたい?」
私の頭の中をまるで読んだような言葉に私はびっくりして目を丸くすると樹くんは優しく微笑んた。
「あははっ。当たった?」
「う、うん。」
「でしょ?実は僕も見てみたいんだ。中庭の桜。先生に聞いてみよっか!2人が友達になった記念に見に行きたいし!」
友達になった記念…!
「でも、星川先生許してくれるかな…?」
先生は以外と厳しいから…。
「あ、そこは僕に任せて!!!人生って以外と短いしやりたいって思った時に動かなきゃ損するからさ!!じゃあ、僕聞いてくるね!」
い、行っちゃった…。
樹くん行動力凄いなっ…。
星川先生は普段すごく優しいけれどルールとか体調の事にはすごく厳しいから樹くんがお願いしても許してくれない気がする。
でも、朝は検査の結果も変化がないって言ってたし、もしかしたら…ね。
もう一度窓の外に広がる春の景色に目を戻し、通り過ぎていく人達を眺めながら樹くんを待った。

「オッケー貰えたよ!!」
「えっ!本当に…!?」
あの先生が…!?許可してくれたのっ…!?
「うん!だから言ったでしょ!!!僕にまかせてって!」
言ってたけれど…まさかオッケー貰えるとは…。
「早速、今日の夕方に先生が時間作って連れて行ってくれるってさ!」
「本当にありがとうっ!樹くん!」
私がそう言うと樹くんは満面の笑顔でピースをした。
「あ!2人とも!」
私も樹くんに笑顔を返した時ドアの方から声がして振り向くと星川先生が立っていた。
「先生…!あのっ、桜を見に行くのを許可してくれてありがとうございます…!」
あれ…?先生凄い汗かいてる…?
「大丈夫ですか?凄い汗…。」
「あっ、大丈夫!それより今から見に行こう!時間ができたから急いで来たの!!」
「ほ、本当ですか!?」
だから先生ここまで走ってきてくれて…。
「ほら!早く行こっか!」
「「はいっ!!!」」
大きく頷いて先生の後に着いていく。
病室から少し離れた人通りの少ない階段を1階まで下りて廊下を少し歩くと大きな桜の木が植えてある広いお庭が現れた。他にも噴水とかベンチがあって他の患者さんたちも桜を見て楽しんでいるようだった。
先生は入口のドアを開けてくれて2人で中庭に入った。
「ここ…ですか?先生。」
「うん。ここだよ。桜もちょうど満開でキレイだね!近くまで行こっか!」
「あ、はい!」
近くまで歩いて行って私は驚いた。
桜の木ってこんなに大きかったんだ…。
「凄い…。」
「凄いね…。」
樹くんと私の声が揃った時、急に勢いよく強い風が吹いた。
「わっ…!!」
風がおさまってゆっくり目を開けると桜の花びらが宙に舞っていた。
「き、キレイ…!!」
お母さんが言ってた通り一面桃色に染まった視界。
「あ、優花ちゃんの頭に花びらついてる。取るから動かないでね。」
樹くんはそう言うと桜の花びらを取ってくれてそれを私の手のひらに乗せた。
「ありがとうっ。樹くん!」
「いいえ!!良かった、2人で桜見れて。しかも桜吹雪も見れたしさ!最高の友達記念日になったね!」
「うんっ!」
本当にキレイだったけど写真撮れなかったな…。
「いや〜いい写真取れちゃったなっ!」
あ、先生いること忘れちゃってた…。
というか先生写真撮ってたんだっ…!
「これこれ!すごくいい写真じゃない!?」
先生が撮った写真を見せてもらうと私の頭についた桜の花びらを取ってくれている樹くんとのツーショットが写っていた。
それに桜の花びらもまだ宙に舞っている瞬間。
「…先生写真撮るの上手くないですか?」
後ろから見ていた樹くんの一言に私も頷いた。
「そーかなー?でも、なんにせよいい写真が撮れたしこれはまた印刷してあげるねっ。」
「「あ、ありがとうございます!!!」」
「じゃあ先生先に戻るねっ!2人もすぐ戻りなよ〜!」
先生に手を振って見送った後、2人でもう一度桜の木の方へ振り向いた。
「来年も再来年も友達記念日に2人でここの桜見にこようねっ…!」
私が笑顔で小指を出すと樹くんも微笑んで小指を差し出してくれた。
「約束!」
今日、初めましての樹くんと私。
だけれど昔からの友達のようにはしゃいだ今日はなんの代わり映えのない毎日に節目を打つには十分すぎる
日だったと私は思った。