…が、たった10人しかその資格は得られない為、私ははなから交流券の当落は眼中になかった。
当たるなど夢にも思っていなかった。
たった1万人だけが得られるライブの席を勝ち取り、さらに最前列を引き当て、幻の交流券にまで当選しているとは。
何もかもが上手くいき過ぎている。
明日、私は死ぬのかな?
身に余るほどの幸福に、私は静かに涙を流した。
やはり、世界は薔薇色だ。
推しが私の世界を幸せな色に染めてくれる。
ああ、早く、透くんに会いたい。
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幸せの絶頂の中、ライブは始まった。
会場が暗転し、大きなメインステージと花道とサブステージだけにライトが当てられる。
それからメインステージの後ろにある大きなスクリーンに、romanceのメンバーの映像が流れ始め、派手な音楽が鳴り響いた。
そして光と煙と共にステージ上に現れたromanceメンバーに、会場中のファンは沸いた。
その後に出てきたLOVEにも、同じような歓声が起きた。
だが正直、知名度、人気、どれを取っても圧倒的にromanceの方が上である為、ここにいるほとんどの人がLOVEではなく、romanceを推し、熱烈な声を上げている。
「romanceー!」
「翡翠くーん!」
「奏多ー!」
私の周りにいる女の子たちも、みんなromanceに声援を送っていた。
手に持っているペンライトもromanceのものだ。
どう考えても、LOVEにとって、ここはアウェイ。
それでも私は、周りのromanceファンに負けないように、声を張り上げた。



