side天音
ゆっくりといつものように、まぶたを開ける。
だが、いつもと同じはずなのに、何もかもが違った。
体を沈めるマットレスはふわふわで心地が良く、掛けられた布団は肌触りがとてもいい。
目に映る天井は見慣れたものとは違い、高級ホテルのような清潔感があり、私の知っている生活感がそこにはなかった。
ぼんやりとしていた思考は、いつもとは違うここに、はっきりとし始めた。
ーーーここ、どこ。
知らない場所に、慌てて体を起こす。
ここを取り囲む大きな窓の外の空は暗く、星が瞬いており、その下には小さなビル群が光を放っている。
見たことのない景色だ。
「おはよう、天音さん」
右隣から聞き覚えのある甘い声が私を呼ぶ。
バッと勢いよく声のする方へ視線を向ければ、そこには大きなベッドに腰掛け微笑む翡翠がいた。
どうして、翡翠が?
それに、名前も…。
そこまで考えて、意識を手放す前のことを思い出す。
そうだ。私、翡翠と交流券を使って、話をしていたんだった。
コーヒーを飲んで、少しお菓子を食べて、手を握られて、たくさん話をした。
4ヶ月前と同じように、楽しいひと時を過ごして、それから…。



