社員のパソコンを少しいじれば、天音さんをライブにも交流会にも当選させられたし、いい席もあげれた。
巧妙に罠を張り巡らせ、捕まえる。
俺が蜘蛛なら、彼女は蝶だ。
捕まえて、糸でがんじがらめに固めて、もう2度と離さない。
コンコンッと扉をノックする音が響く。
その音の後に扉を開けて現れたのは、メンバーの裕也だった。
「おーい。翡翠時間だぞー…って、え?」
裕也はいつもの調子で俺に声をかけた後、ある場所を見て、驚いたように言葉を詰まらせた。
裕也の視線の先には、ソファで眠る天音さんがいる。
「あー。なんか疲れちゃったみたいで、寝ちゃってさ」
俺は驚きを隠せない様子の裕也に、何でもないことのように笑った。
「起こすのもかわいそうだな、て思って、寝かせちゃった」
「あ、そ、そうか…」
俺の説明に裕也が、理解不能だ、という顔をする。
それがきっと普通のリアクションなのだろう。
俺も天音さんじゃなければ、急に寝始めたファンをソファに寝かせたりなどしない。



