推し変には、ご注意を。




緊張しながらも、それでも笑顔を忘れず、ファンと交流すること、1時間。

俺の前に、次は20代前半くらいの綺麗な女の子が現れた。

胸の下まである、ふわふわの黒髪。
センター分けの前髪から見える、綺麗な顔。
白のタートルネックにミニスカ姿は、俺が以前、サバ番内で言った俺の好きな女の子の格好だった。



「翡翠、やっと会えた」



俺の姿を見て、女の子が柔らかく破顔する。
その丸い瞳には、他の女の子と同様に、俺が好きだという気持ちがいっぱい込められていた。



「来てくれて、ありがとう」



机の向こうから差し出された女の子の手を握って、当たり障りのないことを言う。

この子にも、たくさんの幸せと愛をあげなくては。

そう思って、女の子の瞳を覗くと、女の子は優しく笑った。



「緊張してる?大丈夫、翡翠は翡翠らしくいればいいんだよ。みんな、翡翠が大好きでここにいるんだから」

「…っ」



女の子の言葉に、思わず目を見開く。
表に一切出していない俺の内情を、どうして彼女は気付いたのか。

彼女の言葉はどこか暖かく、俺の緊張をゆっくりと溶かしていった。
まるで〝ねね〟の言葉のように、心地よい。

目の前にいる彼女は、俺のことがかなり好きなのだろう。
声音、表情、言葉、全てがそれを伝えてくれる。
さらには俺の好みの格好までしてくれているとは。

健気な彼女の愛が嬉しくて、俺の中で、気がつけば、緊張よりも、喜びの感情の方が強くなっていた。