side翡翠
昔からなんでもできたし、なんでも持っていた。
身長も気がつけば高くなっていたし、スタイルもよかった。
顔も整っており、「かっこいいね」と、当然のように言われて生きてきた。
高3の春。
友達とノリで、アイドルのサバイバル番組に応募してみた。
「翡翠ならアイドルになれるっしょ!」
軽くそう言った友達に背中を押されて、俺は気がつけば、サバ番に参加していた。
俺の人生は、イージーモードだった。
だが、サバ番に参加したことにより、俺の価値観は全て脆く崩れ去った。
俺と同じように顔がいい男が、高身長の男が、骨格が優れている男が、掃いて捨てるほどいる。
彼らは容姿がいいだけではなく、幼少期から夢である芸能人になり、活躍するために努力を重ねており、何もして来なかった一般人の俺とは違った。
ある男は踊りができた。
見せられた踊りを瞬時に覚えるだけではなく、自分なりの解釈を入れ、誰よりも魅せる踊りをしていた。
ある男は歌声が綺麗だった。
一度聴くと忘れられないその声は、天性のものだったが、見えないところで、どう歌えば人を惹きつけるのか、研究と努力を惜しんでいなかった。
ある男は表情管理が、またある男は場を楽しませるトーク力が、またある男は自分の魅せ方をよくわかっていた。
俺が一番ではない世界。
俺が劣っている世界。
初めての世界に戸惑ったが、彼らと切磋琢磨し、磨かれていく時間は、何よりも楽しかった。
そしてそんな頑張っている俺の姿を見て、俺を応援してくれるファンという存在が、俺を嬉しくさせた。



