推し変には、ご注意を。





「久しぶりだね、ねねさん」

「え…!私のこと覚えてくれてるの?」

「もちろん」



テーブルを挟んで向こう側で、翡翠が甘く微笑む。
翡翠のまさかの言葉に、私は嬉しい気持ちでいっぱいになった。

翡翠にはたくさんのファンがいて、私はそのうちの1人に過ぎない。
それでもたった1人のファンを覚えているだなんて、さすが翡翠だ。



「ライブ、疲れたよね?俺も疲れたし、一緒に飲もっか」



翡翠はそう言うと、紙コップを私に渡してくれた。
コップの中には、暖かそうなコーヒーが入っており、白い湯気が立っている。

「ありがとう」と翡翠からそれを受け取ると、私はそれに口をつけた。

ほろ苦いコーヒーが、じんわりと私を温める。
翡翠も飲む高いコーヒーだからか、普段飲むコーヒーと味もどこか違う感じがする。
何が違うのか、はっきりとはわからないが。

初めて味わうコーヒーの味を楽しんでいると、同じくコーヒーを口にしていた翡翠が私の前にお菓子の入ったかごを置いた。



「お菓子もあるよ、よかったら食べてね」

「う、うん…!」



微笑む翡翠に、思わず4ヶ月前のように破顔する。
こうして、ファンなら誰もが夢見る、幻の5分間が幕を開けたのだった。