誰もいない4階は、足音を立てることすら憚られるほど静まり返っていた。
「これ部屋どっち?」
エレベーターホールから、右に行く道と左に行く道が広がっている。
小野原さんが「ど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な」と2つの道を交互に指さしているのを見ていると、「とりあえず、右も左も見ていこ!」と、津村さんがヒールをかつかつ鳴らして左の道に入っていった。
置いて行かれないように、私たち4人は急いで津村さんの後を追った。
「ふと思ったけどさ、これどこに泊まるとか教えられてないよね」
廊下の途中で津村さんがふっと立ち止まったせいで、私たちは危うくぶつかりそうになった。
「確かにそうね。どこの部屋でもいいのか、GMさんに聞いてみるわね」
そう言って、園村さんがスマホを操作し始める。
「どこで連絡できるのかしら?」
園村さんの後ろまで歩み寄った小野原さんが後ろから手を伸ばし、「この電話のアイコンでできるんじゃない?」と電話の絵が描かれたアイコンを指さす。
「ここのGMってところを押したらつながると思う」
小野原さんの指示に従って、園村さんが連絡先一覧の一番上にある『GM』をタップして、スピーカーホンに切り替える。
2コールで《GMです。園村優子さんですね。何か御用でしょうか?》と無機質な声が聞こえてきた。
「私たちが泊まる部屋の指定はないんですか」
《申し訳ございません、連絡不足でした。402号室に明日村唯さん、403号室に大宮結愛さん、405号室に津村希亜さん、412号室に園村優子さん、413号室に小野原詩葉さんという部屋割りになっております。》
「決まってるのね」
優子さんが相槌を入れる。
《はい。エレベーターホールを右に曲がってすぐに、明日村唯さん、大宮結愛さん、津村希亜さんの部屋があり、園村優子さんと小野原詩葉さんはエレベーターホールを左に曲がってすぐの位置に部屋がございます》
ぶつっと通話が切れる。
「私と詩葉ちゃんはこっちみたいだから、またあとでね。何かあったら私の部屋に来て」
そう言って園村さんと小野原さんは、私たち3人に背を向けて個室に入っていってしまった。
「…戻ろっか」
津村さんがそうつぶやいて踵を返し、ヒールを鳴らしてエレベーターホールの方に戻る。
エレベーターホールを右に曲がり、すぐのところに402号室がある。
ポシェットから取り出したカードキーをドアにかざし、ドアノブを引くと、扉に下げられた『Asumura Yui』のプレートが揺れた。



