「え、コレドッキリじゃないよね」
気まずい沈黙の中、そう口火を切ったのは深緑のブレザーの女子だ。
「だって、こんな手の込んだドッキリそうそうないじゃん」
深緑のブレザーの女子が半笑いでそう言うと、「たしかにそうね。あ、そうだ。皆さん、自己紹介しましょう」と40代くらいの女性が手を叩いてそう提案した。
「まずは言い出しっぺの私から。園村優子って言います。2人子供がいる、専業主婦です。よろしくお願いします」
その女性――園村さんがそう言うと、「次俺でいい?」と遅刻男が割り込んできた。
「俺、木瀬晴日って言います。高校1年生で、サッカーやってます。よろしくお願いしまっす」
パラパラとまばらな拍手が、静かなロビーに大きく響く。
「じゃあ、あたし。津村希亜です。大学3年生で、インフルエンサーやってます」
津村さんがそう名乗った瞬間、ブレザーの女子が「もしかして、『のあ』ですか⁉」と目を輝かせた。
「うん。」
「後でサインください!」
ブレザーの女子のハイテンションに呆然としていると、「あ、わたし小野原詩葉です。高2です。」と嵐のようなスピードでその女子――小野原さんがそう名乗った。
「じゃあ、次は二つ結びの子で」
そう言って彼女が指さしたのは、私の隣にいた結愛だ。
「あ、えっと、大宮結愛です。中学3年生です。よろしくお願いします」
結愛が名乗り終えた後、私は口を開いた。
「明日村唯です。同じく中3で、結愛とは同じ中学校です。よろしくお願いします…」
一息にそう名乗り終えると、「佐月湊です」と陰鬱な声が聞こえてきた。
そう名乗ったのは、大理石のカウンターに体を預けている茶髪の若い男性。
「大学1年です。よろしくお願いします」
佐月さんが名乗り終えると、すかさずふわふわの髪の男性が手を挙げて自己紹介を始める。
「あ、棚川光です。ホワイトハッカーやってます」
ホワイトハッカーってなんだろう、と疑問が膨らんだところで「簡単に言ったら、セキュリティの弱点を見つけて守る職業っす」と棚川さんが補足説明をしてくれた。
「あと1人かな」
棚川さんがぐるりとあたりを見渡すと、「東山五穂です。趣味で絵をかいてます。」と最後の1人がそう名乗った。
《自己紹介が終わったら、それぞれホテルを探索するなり何なり、ご自由にお過ごしください。18:00から夕食ですので、2階の食堂にお越しください》
GMの声が聞こえたが、それらしき姿はどこにもない。
「ご自由にってやつが一番怖いよね」
「わかる」
結愛とひそひそしゃべっていると、「唯ちゃんと結愛ちゃん…で合ってるかな?そろそろ部屋とかホテルを探索しましょう」と園村さんが歩み寄ってきた。
エレベーターホールで待っていた津村さんと小野原さんと合流し、女性メンバー用の個室がある4階に向かう。



