その日から、マリーに変化があった。
どこか余裕の見えていた彼女が、必死に魔王の事を尋ね。
これから向かう村や町の情報を集めて。
猶予がないのは確か。
そして彼女に急かされるように旅を進める。
マリーが王に願った同行者。
王子ユーリスと騎士のフレック。
学園のレジェス先生も共に、魔王討伐に出発する事となった。
何故か、料理人としてユニアミも同行する。
いよいよ魔王城を目前に野営。
きっと魔王が待ち構えている。
明日に備えて、緊張感の高まったその夜。
「聖女エルティナ、よくここまで成長してくれた。」
それは異なる未来で、元婚約者だった王子ユーリスからの言葉。
「ありがとうございます。命に代えても、この世界の為に身を投じる覚悟で挑みます。」
認められた言葉に、湧き上がる喜び。
それは恋ではない。
聖女リセ様がいれば。常にそう思ってきた。
けれど、ここに彼女はいない。
ユーリスの隣には、ユニアミがいて。
側近の騎士フレックが私に膝をついて、頭を下げる。
「聖女エルティナよ、私こそあなたに誓います。命を懸けて守ると。身を呈して護ります。」
変わってしまった未来。
マリーが何故、この人達を巻き込んだのか理解も出来ないけれど。
こんな戦地なのに、ユニアミは平然としていた。
以前のマリーにあったような余裕。
危機感がないのとは違う。
どこか切り離された場所にいるような。
「聖女エルティナ様。私とマリーで魔法の欠如はありません。同様に、勇者ジークハルト様の遠距離攻撃。王子ユーリス様と騎士フレックの近戦。戦力は十分かと思われます。」
少数精鋭。連携をとるには、訓練の時間が少ないかと思ったけれど。
旅の日々に実戦で強化され、申し分のない状態にまできたのは私でも分かる。
この世界を救うために、出来る限りを尽くしてきた。
「明日に備えて、休みましょう。この場に女神レイラリュシエンヌ様の加護を願い。」
足元に魔法陣。
それはマリーの結界。
私が詠唱を始めると、神官ライオネル様と詠唱が重なる。
魔物も魔獣も寄せ付けない聖法。
最後の夜は、穏やかに眠りたい。
それでも男性陣は、それぞれ持ち場を決めて、警戒を怠らない。
私はユニアミ促されて、簡易のテントに向かう。
その近くに置かれた火を囲み、マリーが私に温かい飲み物を渡した。
「ねぇ、聖女様。お願いがあるの。」
ユニアミの言葉に、私とマリーは目を向ける。
「マリー、安心して。あなたが探していた物は、私が持っているから。」
そう言って肩に掛けた鞄から取り出したのは、星のような形をした石のような物。
それが眩く光り。私は目を覆った。
頭に浮かんだのは。
『女神レイラリュシエンヌ様の加護を“持って”いないのか』
ミニアミの願いは分からない。
聖女は私。
私が世界を救う。
to be continued
