「エレノアに会いに来ました」
俺の言葉に、エレノアの母親の表情が一瞬曇る。
その表情に、何故?と、疑問を抱いていると、エレノアの母親は申し訳なさそうに眉を下げた。
「エレノアは今、体調を崩していて、休んでいまして…。誰かに会える状態ではなくて…。わざわざ来ていただいたのに、ごめんなさい」
「…そうですか」
エレノアの母親の言葉に淡々と頷く。
エレノアが辞職した時の手紙にも、〝体調不良〟と書かれていた。
話の筋は通っている。
「これ、お見舞いです。よかったら」
「あぁ、ありがとうございます」
ここに来るまでにたまたま買っていた林檎を、エレノアの母親に渡す。
エレノアの母親は、申し訳なさそうにそれを受け取ると、「それでは…」と、ゆっくりと扉を閉めた。
閉まる扉を見届けて、家の中から聞こえる足音に耳を澄ませる。
扉から離れ、家の奥へと進んでいったその音に、俺は移動を始めた。
エレノアの寝室の窓の前に。
エレノアに血を吸ってもらうようになってから、何度かエレノアの家にも入ったことがある。
その為、エレノアの家のだいたいの間取りもわかっていた。



