だからアナタに殺されたい。




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帝国騎士団の救護隊の薬師として働き始めて、2年。
20歳の時に、私はローゼルと出会った。

昼下がりの午後の救護室には、いろいろな人がやって来る。
鍛錬や任務で怪我を負った者。
病気や風邪の者。
稀に毒にやられていたり、ただお喋りに来ていたり。

様々な者が行き交うここで、私は今日も変わらず仕事に専念していた。

私と向き合うように椅子に座る美しく若い男の騎士が、無言で私に左腕を差し出している。
捲り上げられたそこから見える傷はかなり大きく、おそらく剣による切り傷のようだった。

何故、おそらくなのかというと、彼が腕を差し出したまま、無言でなんの説明もしないからだ。

艶やかで綺麗な黒髪に、アメジストのような輝きを放つ紫の瞳。
彫刻のように美しい顔に、感情のない冷たい表情。
初めて見る顔だったが、彼が一体誰なのか、私はなんとなくわかった。

彼の名前はローゼル・ホワイト。
帝国騎士学校始まって以来の好成績を残し、今年卒業した、天才騎士様だ。歳は私の2つ下の18歳で、庶民の出ながら、その確かな実力から第一騎士団に所属していた。

噂通り、美しく、そして冷たい人だ。

黙ったまま、こちらを見つめる彼に私はそう思った。