だからアナタに殺されたい。




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手負の猫のような騎士様。
ローゼルに私はそんな印象を抱いていた。

来る日も来る日もいろいろな理由で、ローゼルは救護室に現れる。
怪我の治療に、ちょっとした雑用。
ローゼルへの対応はもちろん私だけの役目ではなく、様々な人がしていたが、その役目をなるべく私がするようにしていた。
私は彼のことがどうしても放っておけなかった。

冷たく誰にも心を開かない。
いつも小さな傷を無数に作り、自分に対してとことん無頓着。
けれど、その中で気まぐれに言葉を発し、「仲良くなれるかも?」と距離を詰めようとすると静かに離れる。

まるで手負の猫のようだ。
その〝手負〟の部分に、何か意図的なものを感じて、私はいろいろな人にローゼルについて聞いてみた。



「ローゼルは学生の時から完璧で他の追随を許さない存在でした。その実力は圧倒的で、隙がなく、思ったことを何でも言う彼には、冷たい印象と同時に怖いという印象もありました」



ある時、怪我の治療に来たローゼルと同期の青年はローゼルについてこう語った。
彼の証言でローゼルが思ったことを何でも言う性格であることを知った。
またある時、私は休憩中の第一騎士団の騎士たちにそれとなくローゼルの話を振ってみた。



「ローゼル?ああ、天才様かなんだか知らないが、アイツ生意気だよな?自分が正しいと勘違いして、上の人間に楯突いてさ」

「だからアイツの備品だけ、ボロボロらしいぜ?」

「いい気味だよなぁ」



彼らの証言でローゼルが第一騎士団内で嫌われていることと、彼の備品だけがその影響を受けていることを知った。
私はいろいろな場所へと出向き、騎士だけではなく、庭師やメイド、様々な人から話を聞いたり、貴族やお偉いさんが話しているところを盗み聞いたりした。

その結果、ローゼルはその圧倒的強さと嘘がつけない性格から第一騎士団内で嫌われ、嫌がらせを受けていることがわかった。