社畜女の愛され白書〜三十路の社畜OLは出会った翌日に八才年下男子と結婚しました〜

バイト君はスマホを取り出した。

「連絡先教えてください。明日また会いましょう」

どういうこと?
なんなの?

「明日ちゃんとしますから」

何を?

「……わかったよ、連絡先くらいなら交換してあげるよ」

折れてしまった。

「ありがとうございます。待ち合わせについてまた連絡します」

「う、うん」

何が起こるんだいったい!

「名前教えてください」

「……川崎七海(なみ)だよ」

バイト君はスマホに入力している。

「あの……君の名前は?」

流石にバイト君とは呼べない。

「林勇凛(ゆうり)です」

勇凛君か……。

「じゃあ、明日私早いからもう帰るね」

「家まで送りますよ」

「いや、いいって!君も早く帰りな」

私はそのあと全速力で走った。

地下鉄の駅に向かって。

あんな冗談か本気かわからない言葉に動揺して、三十路社畜女が情けない。

しっかりしろ私!

地下鉄の改札を出て、ホームに降りて、来た電車に飛び乗った。

真っ暗な地下鉄の窓の外。

地上に出た時に、月が見えた。

丸い月。
満月だろうか。

その時、スマホに通知がきた。

『勇凛です。突然驚かせてすみませんでした。でも俺は本気です。明日また話しましょう』

どうしよう……。

満月を見上げながら、彼の顔を思い出していた。