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すっかり寝支度を整えた夜。扉をカリカリと引っ掻く音に怯えたルイーゼは、続いて聞こえてきたクゥーンクゥーンという鳴き声に肩を落とし、寝台から出て扉を開けた。
「お前、居間に自分の寝床があるでしょう?」
扉を開けるなり子犬はしゅるんと滑るように部屋に入り込んで、嬉しそうにしっぽを振る。ルイーゼは呆れたような笑みを浮かべた。
「わたくしはもう寝るところなのよ。ここにお前の寝床はないのに、一体どうするつもりなの?」
子犬はきらきらと輝く瞳でルイーゼを見つめ、返事をするように「きゃん!」と鳴く。好きな場所に丸まって寝るのかしら、とルイーゼはあくびをかみ殺し、子犬を撫でて寝台に向かった。チャッチャッと後ろから響く音に振り返ると、子犬は何食わぬ顔でルイーゼの後についてくる。ルイーゼが子犬を見つめながら寝台に入れば、当然のような顔つきで子犬はルイーゼの寝台にぴょんと飛び乗った。
「お前ねえ……」
呆れてルイーゼが呟けば、子犬はフンッフンッと鼻を鳴らしながらシーツを掻き、掘るような仕草を見せる。すっかりここで寝るつもりらしい、とルイーゼは諦めたように笑い、身を横たえた。
「もう! 好きにするといいわ」
子犬も寝床を整え終えたらしい。ルイーゼに身を寄せて、くるんと丸まり満足そうに鼻息をもらす。
「ふふっ、あったかい」
子犬からは陽だまりのような、穀物のような香ばしい匂いがする。柔らかく上下する背中と健やかな寝息に安らいで、ルイーゼは心地よい眠りに誘われていった。


