鈍感な私は愛されヒロインです!?

 チャイムが鳴って、理科室にざわっとした音が広がる。
 机の上に置かれたビーカーやスタンドが、授業が始まる前の合図みたいに並んでいた。

 このクラスは、問題児が集められた特別クラス。
 理由は色々あるけど、共通してるのは「普通のクラスにいると、だいたい何か起きる」ってことらしい。
 私は転校してきたばかりで、その説明を聞いたときは正直よく分からなかった。

 先生が実験内容を説明し始めると、渋々って感じでみんな席に着く。
 黒崎くんは椅子を乱暴に引いて座るし、瀬名くんはもう実験器具をいじって注意されてる。
 月城くんだけが、最初から静かにノートを開いていた。

「じゃあ、班ごとに準備しろー」

 その一言で、また一気に動き出す。
 私は指示された薬品を取りに行こうとして、棚の前で少し背伸びをした。

 ——届かない。

 どうしようか迷っていると、横からすっと腕が伸びてきて、目的の瓶が私の目の前に置かれた。

「これ?」

 低い声。振り向くと、月城くんがもう視線を外していた。
 私は慌てて「ありがとう」と言ったけど、返事はなくて。

 そう思いながら席に戻ると、今度は黒崎くんが不機嫌そうに言った。
「割るなよ。それ、高ぇから」

 心配してるのか、脅してるのか分からない。

 瀬名くんはそれを聞いて、肩をすくめて笑った。
「それ割ったら伝説」

 からかうみたいな口調に、周りが少しだけ笑う。
 私は思わず手元を見て、慎重に水を注いだ。

 ……なんでだろう。
 今日は、やけにみんな優しい気がする。