鈍感な私は愛されヒロインです!?

 昼休みのチャイムが鳴った瞬間、教室の空気が一気にゆるんだ。
 さっきまでの授業の名残みたいな静けさは消えて、椅子を引く音や机を叩く音があちこちで重なる。

「腹減った〜」

 瀬名くんが一番に立ち上がって、伸びをする。
 相変わらず元気だな、と思いながら、私は鞄からお弁当を取り出した。

 学園祭が終わって、今日はその翌日。
 だからって、何かが大きく変わるわけでもない。

 ……はずだった。

「桜庭、弁当それ?」

 黒崎くんが、前の席からちらっと振り返る。
 いつもより声が低い気がしたけど、たぶん気のせい。

「うん。昨日の残り」

「へぇ」

 それだけ言って、黒崎くんはそれ以上何も言わずに前を向いた。
 変な間があった気がして、私は首をかしげる。

「ひより、こっち来なよ」

 瀬名くんが、いつもの調子で手招きする。
 昼休みは、だいたいこの流れだ。

「うん、今行く」

 そう答えて席を立つと、月城くんが静かに椅子を引いた。

「ここ、空いてる」

「ありがとう」

 自然に言葉を交わして、私はそのまま腰を下ろす。
 距離も、配置も、昨日までとほとんど変わらない。

 なのに。

「……近くない?」

 ぽろっと、そんな言葉が口から出た。

「何が?」

 瀬名くんが、箸を止めて首を傾げる。

「いや、なんでもない」

 自分で言っておいて、よくわからなくなってしまう。
 別に、狭いわけじゃない。
 ただ、いつもより人の気配がはっきりするというか。

 月城くんが、何も言わずに少しだけ距離を取った。
 その動きが妙に目に入る。

「……?」