鈍感な私は愛されヒロインです!?

「……俺、先輩のこと、誰にも渡したくありません」

 一瞬、頭が真っ白になる。

「え……?」

 声が、うまく出ない。

 蒼くんは、私の反応を待つみたいに、じっと見ている。
 その視線があまりにも真剣で、目を逸らすこともできなかった。

 少しの沈黙。

「……ごめんね」

 蒼くんは一瞬だけ目を伏せた。
 でも、次の瞬間——

 一歩、距離を詰められる。

「……っ」

 気づいた時には、腕が回っていた。

 ぎゅっと、強くはないけど、逃げ場のないハグ。
 制服越しに伝わる体温に、息が詰まる。

「すみません……」

 耳元で、少し震えた声。

「俺……もう、我慢できないです」

「蒼くん……?」

「先輩が誰かに取られるかもしれないって思ったら……」

 腕に、少しだけ力がこもる。

 顔は見えないけど、声だけでわかる。
 必死で、真剣で、全部本音。

「……大好きです」

 しばらくして、そっと腕が緩む。

 名残惜しそうに離れて、蒼くんは一歩下がった。

「……ごめんなさい。急に」

 そう言って、少し照れたように笑う。

「学園祭、楽しんでください。
 俺も、先輩のそばにいられる時間、大事にしますから」

 それだけ言って、軽く頭を下げた。

「……失礼します」

 元気な足取りで去っていく背中。
 でも、さっきより少しだけ、肩が緊張しているのがわかった。

 ——今の、完全に告白以上だった。

 胸が、さっきよりずっと苦しい。