鈍感な私は愛されヒロインです!?

 気づけば、少し喉が渇いていた。

「……ちょっと飲み物取ってこようかな」

 そう呟いた時。

「桜庭先輩」

 後ろから、聞き慣れた明るい声がした。

 振り向くと、桐谷くんが立っている。
 クラスの腕章をつけたまま、少しだけ息を切らしていた。

「蒼くん?」

「はい。あの……今、少しだけ時間ありますか?」

 言い方は丁寧だけど、どこか必死さが滲んでいる。

「うん。どうしたの?」

「よかった……」

 小さくそう言ってから、周りを確認する。
 人の少ない廊下の方を指差した。

「少し、こっちに」

 展示の裏よりも、さらに静かな場所。
 窓から校庭が見える、通路の端。

 足を止めた蒼くんは、深呼吸をひとつした。

「……あの」

 いつも元気な彼が、珍しく言葉を探している。

「学園祭、すごいですね」

「うん。にぎやかだよね」

「はい。でも……」

 蒼くんは私をまっすぐ見た。

「俺、今日ずっと、桜庭先輩のこと探してました」

「え?」

 思わず、声が出る。

「同じクラスじゃないから、なかなか会えなくて」

 少し照れたように笑ってから、でもすぐ真剣な表情に戻る。