鈍感な私は愛されヒロインです!?

「……人気者だな」

 冗談なのか、本気なのか、わからない言い方。

「え?そんなことないよ」

 私が即答すると、月城くんは一瞬だけ目を伏せた。

「……そういうところ」

「?」

「気づいてないところ」

 何のことかわからなくて、私は首を傾げる。

 月城くんはそれ以上説明しなかった。
 代わりに、私の手元にそっと視線を落とす。

「……手、冷たい」

「え?」

 気づくと、月城くんの指が、私の手首に軽く触れていた。
 掴むほどじゃない。
 確かめるみたいな、ほんの一瞬。

「……人、多いから」

 それだけ言って、すぐに手を離す。

「迷子になるな」

 黒崎くんと、同じ言葉。
 でも、言い方はまるで違う。

「大丈夫だよ」

 そう言うと、月城くんは私をじっと見た。

「……俺は、大丈夫じゃない」

 小さく、でもはっきりと。

「え?」

 聞き返した時には、もう視線を逸らしていた。

「……戻ろ」

 それだけ言って、歩き出す。

 私は少し遅れて、後を追う。

 ——今の、どういう意味だったんだろう。

 さっきから、同じような言葉ばかり。
 なのに、誰一人として理由を教えてくれない。

 胸の奥が、静かにざわつく。

 学園祭の音に包まれながら、
私はただ、少し不思議な気持ちのまま歩いていた。


 展示スペースに戻ってから、しばらくは本当に忙しかった。
 人の流れが途切れず、説明をしては次、の繰り返し。