鈍感な私は愛されヒロインです!?

 少し落ち着いた頃。

「桜庭」

 後ろから、低く落ち着いた声がした。
 振り向くと、月城くんが立っている。

「これ、補充したほうがいいと思う」

 手にしているのは、展示用の資料。
 私は覗き込んで、頷いた。

「うん、ありがとう。助かる」

「……裏にある」

 そう言って、月城くんは歩き出す。
 私は何も考えず、その後をついていった。

 展示の裏。
 さっきまでの賑やかさが、少し遠くなる。

「ここ」

 月城くんが足を止める。
 棚の奥から資料を取り出す間、私は横で待っていた。

 沈黙。
 でも、不思議と気まずくない。

 月城くんは必要な分を揃えてから、私の方を見る。

「……忙しそうだったな」

「うん。でも楽しいよ」

 そう答えると、月城くんは小さく頷いた。

「学園祭、好き?」

「好きだよ。準備は大変だけど」

「……そう」

 それだけ。
 会話はそれ以上広がらない。

 でも、月城くんはそのまま動かず、私のすぐそばに立っている。
 肩が、ほんの少しだけ触れそうな距離。

「……さっき」

 月城くんが、ぽつりと切り出した。

「黒崎と、瀬名と……桐谷とも、話してた」

「うん」

 事実を答えただけなのに、なぜか少し緊張する。