鈍感な私は愛されヒロインです!?

「学園祭の話だよ?」

「そっか」

 そう言って、瀬名くんは私の頭にぽん、と手を置いた。

「ならいーや」

「え?」

「ひよりが楽しそうなら」

 いつもみたいな軽さ。
 でも、手を離すまでが、ほんの一瞬だけ長かった。

「……あんまり他のやつと話しすぎんなよ」

 冗談みたいな言い方。
 でも、目は冗談じゃない。

「?」

 私が首を傾げると、瀬名くんはすぐに笑った。

「なーんて。学園祭だしな」

 そう言って、何事もなかったみたいに手を離す。

「ほら、戻ろ。人増えてきた」

 先に歩き出す背中は、いつも通り軽やか。
 さっきの一瞬が、まるでなかったみたい。

 でも——

 胸の奥に、ほんの小さな引っかかりが残った。

 ——今の、冗談……だよね?

 答えは出ないまま、私は瀬名くんの後を追う。


 学園祭のざわめきの中で、
少しずつ、何かが変わり始めている気がした。


 瀬名くんと展示スペースに戻ってから、しばらくは忙しかった。
 来場者の対応、説明、呼び込み。
 気づけば、時間はあっという間に過ぎていく。