鈍感な私は愛されヒロインです!?

 黒崎くんと合流して展示スペースに戻ると、すでに来場者が増え始めていた。
 クラスの前も、ちらほら人が立ち止まっている。

「お、戻ってきた」

 声をかけてきたのは瀬名くんだった。
 いつもの軽い笑顔。
 さっきまでの張りつめた空気が、少しだけ和らぐ。

「どこ行ってたの、ひより」

「最終確認って言われて」

「へぇ〜。黒崎、真面目じゃん」

 そう言いながら、瀬名くんは私の隣に立つ。
 距離が近いのはいつも通り……のはずなのに、今日は少しだけ意識してしまう。

「なに緊張してんの?」

「え?してないよ」

「顔に出てる」

 くすっと笑われて、私は思わずむっとした。

「出てないし」

「はいはい」

 瀬名くんは軽く流して、展示の説明を始める。
 来場者への対応も慣れていて、場の空気を作るのが上手い。

 ——やっぱり、瀬名くんは瀬名くんだ。

 そう思っていた、その時。

「なー、ひより」

「なに?」

「ちょっとだけ、裏来て」

「今?」

「すぐ戻るから」

 理由も言わずに、袖を軽く引かれる。
 強くない、でも拒めない力。

 展示の裏、さっき黒崎くんと話した場所とは少し違う位置。
 人の声は聞こえるけど、視線は届かない。

「どうしたの?」

 私が聞くと、瀬名くんは一瞬だけ言葉に詰まった。

「……いや」

「?」

「さっきさ、黒崎と一緒だっただろ」

「うん」

「桐谷とも話してたし」

 軽い口調なのに、目は笑っていない。
 それに気づいて、私は少し戸惑う。