鈍感な私は愛されヒロインです!?

 黒崎くんの後ろを歩きながら、私はさっきのやり取りを頭の中で反芻していた。

 蒼くんの様子も、黒崎くんの強い口調も、どこかちぐはぐで。

 展示スペースの裏。
 人の流れから少し外れた場所で、黒崎くんは足を止めた。

「……ここでいい」

 振り向いた彼は、腕を組んだまま、視線を私から逸らしている。
 さっきまでの強気な雰囲気は少し薄れていて、代わりに落ち着かない空気が漂っていた。

「最終確認って、ここ?」

「……そうだ」

 明らかに違う。
 でも、それを指摘するのもなんだか変な気がして、私は黙った。

 少しの沈黙。

 周囲のざわめきが、ここだけ遠く感じる。
 黒崎くんは、何か言いたそうに口を開いては閉じてを繰り返していた。

「……さっきの」

 低い声で、ようやく言葉が落ちる。

「桐谷と、話してたろ」

「うん」

「……何の話」

 問い詰めるような言い方じゃない。
 むしろ、探るみたいな、確かめるみたいな声。

「学園祭のことだよ。呼ばれて——」

 そこまで言ったところで、黒崎くんの表情がほんの少しだけ変わった。

「……そうか」

 それだけ言って、視線を逸らす。
 納得したようで、していない。