鈍感な私は愛されヒロインです!?

 展示の最終チェックをしていると、背後から声がした。

「桜庭先輩」

 振り向くと、蒼くんが立っている。

 今日は他クラスの手伝いのはずなのに、わざわざここまで来ていた。

「蒼くん。どうしたの?」

「えっと……少しだけ、時間いいですか?」

 元気なはずの声が、ほんの少しだけ硬い。
 その違和感に気づいて、私はつい笑ってしまった。

「大丈夫だよ。まだ始まる前だし」

「ありがとうございます」

 その瞬間——
 空気が、はっきり変わった。

 黒崎くんの視線がこちらに向く。
 瀬名くんは笑ったまま、目だけが鋭くなる。
 月城くんは手を止め、何も言わずにこちらを見る。

 ……え?

「桜庭先輩、あの……」

 蒼くんが何か言いかけた、その時。

「おい」

 低い声が割り込んだ。

「展示、そろそろ最終確認だろ。桜庭、こっち来い」

 いつもより、少しだけ強い口調。
 私は一瞬迷って、蒼くんを見る。

「ごめんね、あとでいい?」

「……はい」

 蒼くんはそう言って笑ったけど、その表情はどこか複雑だった。

 ——今の、そんなに大事な話だったのかな。

 そう思いながら、私は黒崎くんの後を追った。