鈍感な私は愛されヒロインです!?

 そして——

 校門をくぐった瞬間、空気が一変した。

 色とりどりの装飾、聞こえてくる音楽、どこからか漂う甘い匂い。

 まだ朝なのに、校内はすでに人でいっぱいだ。

「……すご」

 思わず声が漏れる。

 準備期間も慌ただしかったけど、こうして完成した学校を見ると、やっぱり圧倒される。

 私はクラスの集合場所へ向かいながら、胸元の名札を整えた。

 特別クラスの出し物は展示中心。派手ではないけど、私たちらしい内容だ。


 教室に入ると、すでに男子たちが集まっていた。

 黒崎くんは腕を組んで壁にもたれている。
 いつも通り強気な態度だけど、視線が落ち着かない。

 瀬名くんは軽い調子で周囲と話しているけど、なぜか何度も私の方を見る。

 月城くんは準備物を確認しながら、すごく真剣な表情で何かを考えているように見えた。

 ……なんだろう。

「おはよ」

 私が声をかけると、返事が少しだけ遅れた。

「お、おう」
「おはよ、ひより」
「……おはよう、桜庭」

 ほんのわずかな間。
 でも、なぜかそれが引っかかった。

「?」

 首を傾げつつ、私は準備に加わる。
 忙しさに紛れて、その違和感はいったん頭の隅に追いやられた。

 ——はずだった。