鈍感な私は愛されヒロインです!?

「私、蒼くんのこと、大切な後輩だと思ってる」

 一瞬、蒼くんの表情が曇る。
 でも、すぐに前を向いた。

「……はい」

 そして、はっきりとした声で続ける。

「でも、俺は後輩として見られるだけじゃ、嫌です」

 真っ直ぐな視線。

「一人の男として、ちゃんと見てほしい」

 少し照れたように笑いながら、でも引かない。

「だから……いきなりじゃなくてもいいです。友達からでも、いいですか?」

「……」

「諦めるつもり、ないので」

 元気な口調なのに、その言葉だけは真剣だった。

 私は思わず、蒼くんを見つめる。

「……うん」

 それだけ答えると、蒼くんは少し驚いた顔をしてから、ぱっと笑った。

「ありがとうございます!それだけで十分です!」

 いつもの明るい笑顔。
 でも、その目はさっきよりずっと強かった。

 蒼くんは一歩下がって、軽く頭を下げる。

「じゃあ、今日はこれで!お疲れさまでした、桜庭先輩!」

「うん、お疲れさま」

 蒼くんは振り返りもせず、校門の向こうへ走っていった。

 その背中を見送りながら、私はまだ、状況を完全には理解できていなかった。

 ただひとつだけ。
 今日の放課後が、いつもと同じじゃなかったことだけは、確かだった。