鈍感な私は愛されヒロインです!?

 廊下に出ると、夕暮れの光が長く伸び、教室の影を柔らかく染めていた。


 校門前まで来ると、桐谷蒼が少し離れた場所で待っていた。
 小さく手を挙げてにこっと笑っている。


 少しだけ深呼吸してから、いつもの明るい声で話しかけてくる。

「桜庭先輩、少しだけ時間いいですか?」

「うん、いいよ」

 蒼くんはにこっと笑ったまま、でも足先が落ち着かない。

「えっと……単刀直入に言いますね」

 一瞬、間が空く。

「俺、桜庭先輩のことが好きです」

「……」

 言葉が出てこなかった。
 頭の中が追いつかなくて、私はただ目を瞬かせる。

「……え?」

 それだけしか言えなかった。

 蒼くんは、私の反応を見て少し困ったように笑う。
 でも、視線は逸らさない。

「急ですよね。すみません。でも、ちゃんと伝えたくて」

 私はしばらく黙ったまま、指先をぎゅっと握る。
 どう言えばいいのか、すぐには分からなかった。

「……少し、考えてもいい?」

「はい」

 少し間を置いてから、ゆっくり口を開く。

「蒼くんの気持ちは、すごく嬉しい。ちゃんと伝えてくれてありがとう」

 蒼くんの表情が、少しだけ明るくなる。

「でも……ごめんね。今は、その気持ちには答えられない」

 声は震えなかった。
 ちゃんと、正直に言いたかったから。