鈍感な私は愛されヒロインです!?

 理科が終わると、次の授業まで少しだけ時間が空いた。

「疲れたー」

 教室に入るなり、瀬名くんが大げさに机に突っ伏した。

「説明だけだったでしょ」

「精神的にね」

「なにそれ」

 笑いながら荷物を置く。
 さっきまでの張り詰めた感じが、少しずつほどけていく。

 黒崎くんは自分の席に座って、スマホをいじっていた。
 画面を見てるけど、たぶん何も見てない。

 ——さっきの紙のこと、聞いたほうがいいのかな。

 そう思ったけど、
 なんて聞けばいいか分からなくて、やめた。

「桜庭」

 月城くんが、後ろの席から声をかけてくる。

「なに?」

「……腕」

 一瞬、意味が分からなかった。

「さっき、引っ張っただろ」

「ああ」

 言われて、ようやく思い出す。

「平気だよ」

「ほんとに?」

「ほんと」

 そう答えると、月城くんは少しだけ安心したみたいに頷いた。

「ならいい」

 それだけ言って、前を向く。

 会話は短いのに、
 なぜか胸の奥に残る。

「なに、月城だけ特別対応?」

 瀬名くんが、にやにやしながら顔を上げた。

「特別じゃないよ」

「じゃあ俺も確認しよっか。怪我してない?」

「してないって」

「残念」

「なにが」

 軽口を叩いていると、
 急に椅子を引く音がした。

「……」

 黒崎くんだった。