鈍感な私は愛されヒロインです!?

 チャイムが鳴ると同時に、教室が一気にざわついた。
 理科は別棟。廊下も階段も、毎回ちょっとした渋滞になる。

「急ぐぞー」

 前のほうを歩く黒崎くんが、短く言う。
 その一言だけで、クラスの流れが少し速くなるのが不思議だった。

 私はノートと教科書を抱えて、その少し後ろを歩く。
 横では瀬名くんが、相変わらず気楽そうな顔。

「今日の実験、失敗したら爆発とかしないよね」

「しないと思う」

「思う、かあ」

 そんなやり取りをしているうちに、廊下の角で人の流れが詰まった。
 他クラスと合流したらしい。

 そのときだった。

 どん、と鈍い音。
 黒崎くんの肩に、他クラスの男子がぶつかった。

「……あ?」

 黒崎くんの声が、低く落ちる。
 空気が一瞬で変わったのが、はっきり分かった。

「あぁ、悪いっ」

 相手は軽く言ったけど、どこか投げやりで。
 その態度に、黒崎くんが一歩、前に出る。

 ——まずい。

 そう思った瞬間、私は気づいたら前に出ていた。

「ごめん、急いでたよね」

 自分でも驚くくらい、落ち着いた声が出た。
 相手の男子と黒崎くんの間に、自然と立ってしまう。

 一瞬、周りが静かになる。