鈍感な私は愛されヒロインです!?

「会長って、蒼くんのこと」

「名前で呼ぶくらいには」

 静かに笑う。

「面倒見てる」

 それ以上、踏み込んでこない。

「無理はしないで」

 ふっと、視線が合う。

「君が思ってるより、周りは見てるから」

「……はい」

 意味が分かったような、分からないような。

「今日はそれだけ」

「分かりました」

 立ち上がると、

「桜庭」

 呼び止められる。

「君は、ちゃんと自分の立場分かってる」

 それだけ言って、また書類に目を落とした。

 生徒会室を出ようとして、ドアに手をかけたところで。

「桜庭」

 また呼ばれて、振り返る。

「はい」

 会長は席を立っていなかった。
 でも、さっきより少しだけ視線が柔らかい。

「一つだけ」

「……?」

「桜庭は、無理して笑う癖あるだろ」

 一瞬、言葉が出なかった。

「困ったら、俺でも、生徒会でも……頼れよ」

「……以上」

「……はい」

 ドアを閉めて、廊下に出る。

 さっきまで何ともなかったはずの空気が、少しだけ違う。

 無理して笑う癖。

 そんなこと、誰にも言われたことなかったのに。

 歩きながら、さっきの声を思い出す。

 ちゃんと見てたみたいな言い方。

「……なんで今、それ言うの」

 生徒会長、神楽坂悠馬。
 近づいたわけでもないのに、
 なぜか頭から離れない人だった。