鈍感な私は愛されヒロインです!?

「そっか」

「はい」

 チャイムが鳴り始める。

「あ、そろそろ授業始まっちゃう」

「はい。次、移動なので」

 少し名残惜しそうに視線を落とす。

「また、話しかけてもいいですか」

「もちろん」

 何も迷わず答えた。

「蒼くん」

 名前を呼ぶと、ぱっと顔が明るくなる。

「……はい」

 それだけで満足したみたいに、小さく笑った。

「じゃ、行きます」

「うん、頑張って」

 蒼くんが廊下を小走りで去っていくのを見送ってから、教室に戻る。

 戻った瞬間。

「なにあれ」

「完全に呼び出しじゃん」

「距離近くね?」

 好き勝手な声が飛んでくる。

「違うって」

 席に座りながら言うと、

「はーいはい」

 瀬名くんが手をひらひら振った。

「蒼くん、満足そうだったね」

「……見てたの?」

「そりゃ見るでしょ」

 机に肘をついて、にやっと笑う。

「名前呼ばれただけで、あの顔」

「瀬名くん、言い方」

「事実」

 でも、そのあと少しだけ声を落とす。

「無自覚で落とすタイプだよね、ひより」

「なにそれ」

「いや、なんでも」

 チャイムが完全に鳴る。

 先生が入ってきて、教室が静かになる。

 ノートを開きながら、さっきの蒼くんの笑顔が頭に浮かんだ。

 ただ名前を呼んだだけ。

 それだけなのに――
 どうして、こんなに残るんだろう。

 黒板を見るふりをしながら、そっと息を吐いた。