鈍感な私は愛されヒロインです!?

 昼休みの終わりが近づいて、教室の中が少しずつ落ち着いてくる。

 お弁当箱を片づけていると、廊下のほうが少し騒がしくなった。

「……誰か来てない?」

 クラスの誰かが言った、その直後。

「あ」

 教室の入口に、人影が見えた。

 桐谷くん――蒼くんだった。

 クラスが違うせいか、少しだけ居心地が悪そうに、でもはっきりこちらを見ている。

「桜庭先輩」

 名前を呼ばれて、顔を上げる。

「どうしたの?」

「えっと……」

 一瞬、周りを気にする。

 問題児クラス、という噂は伊達じゃなく、何人かがもう興味津々でこちらを見ていた。

「今、少しだけいいですか」

「うん」

 立ち上がって、教室の外に出る。

 背中に、視線が集まるのが分かる。

「なに、後輩くん?」

 瀬名くんの、わざとらしく楽しそうな声が聞こえた気がした。

 廊下に出ると、蒼くんは少しほっとした顔をした。

「すみません、急に」

「大丈夫だよ」

「その……」

 少し言いづらそうに、でもちゃんと目を見て言う。

「さっきの呼び方」

「蒼くん?」

「はい」

 小さく頷く。

「呼んでもらえたの、嬉しくて」

「……それだけ?」

「それだけです」
「ちゃんと、言えてよかったなって思って」

 そんなことで、わざわざ来たの?
 そう思ったはずなのに、胸の奥が少しだけ温かくなる。