鈍感な私は愛されヒロインです!?

「いつの間に“蒼くん”になったの?」

 思わず箸が止まる。

「……聞いてたの?」

「聞こえた」

「てか普通に聞こえる距離だったし」

「別に、いいじゃん」

「いいけどさ」

 瀬名くんは、からかうような口調のまま続ける。

「距離縮むの早くない?」

「そう?」

「そう」

「昨日まで“桐谷くん”だったのに、今日はもう下の名前」

「蒼くんがそう呼んでほしいって言っただけだよ」

「はいはい」

 軽く流すけど、視線が一瞬だけ鋭くなる。

「後輩くん、ああ見えて大胆だよね」

「大胆って」

「普通、言えないでしょ。先輩に」

 そう言われて、昨日の廊下を思い出す。

 確かに、かなり勇気出してた気はする。

「……でも、別に変な意味じゃないし」

「分かってるって」

 瀬名くんは笑った。

「桜庭が鈍感なのも含めて」

「それ、褒めてる?」

「半分」

 そう言って、弁当のおかずを一つつまむ。

「ま、いいんじゃない?」

「なにが」

「蒼くん」

 わざと、ゆっくり呼ぶ。