鈍感な私は愛されヒロインです!?

 次の日の朝。

 教室に入ると、いつもと同じ景色のはずなのに、どこか落ち着かなかった。

 席に向かう途中で声をかけられて、振り返る。

「おはよう、桜庭先輩」

 桐谷くんだった。

 昨日と同じ制服、同じ声。
 なのに、少し距離が近い気がする。

「今日、早いね」

「はい。ちょっと余裕あって」

 そう言って、私の隣の席の横で立ち止まる。

 ……あれ?

 距離、前より近くない?

「おはよ、桐谷くん」

 そう声をかけると、嬉しそうに頷いた。

「おはようございます」

 その様子を、前の席からじっと見ている視線があった。

「……朝から仲いいねえ」

 振り返ると、瀬名くんが机に頬杖をついてこっちを見ている。

「え?」

「いや、別に?」

 軽い口調。

「なんか、距離感バグってない?」

「そうかな」

「そうだよ」

「昨日まで、そんな近くで話してなかったでしょ」

「たまたまだよ」

「はいはい」

 瀬名くんは笑う。

 でも、その笑い方が、ちょっとだけ引っかかった。

「……あ」

 桐谷くんが、はっとしたように一歩下がる。

「す、すみません。近かったですよね」

「え、いや」

 慌てる姿が、逆に目立つ。

「大丈夫だよ」

 そう言うと、桐谷くんはほっとしたように息をついた。

「よかった……」

 そのやり取りを見て、瀬名くんが小さく息を吐いた。