鈍感な私は愛されヒロインです!?

「桐谷くん」

「は、はい」

「君が正直に話してくれたから、状況は整理できた」

 責める様子は、どこにもない。

「怖かっただろう」

 その一言に、桐谷くんの肩が少し揺れた。

「……はい」

 小さな声。

「でも、誰かが悪く言われるのは、嫌でした」

 ぎゅっと拳を握る。

「僕が見たことは、ちゃんと伝えないといけないって思って……」

 会長は、静かに頷いた。

「それは、簡単なことじゃない」

 それから、少しだけ表情を緩める。

「よくやった」

 その言葉を聞いた瞬間、桐谷くんの目が見開かれた。

「……ありがとうございます」

 声が、ほんの少しだけ震えていた。

 次に、会長の視線が私に向く。

「桜庭さん」

「はい」

「君が声をかけなければ、彼は一人で抱え込んでいたかもしれない」

「……たまたま、です」

 本当に、そうだった。

「たまたまでも」

 会長は、はっきり言った。

「人をつなぐ役目を、自然にやれる人は多くない」

 一瞬、言葉に詰まる。

「君は、周りをよく見ている」

 静かな声なのに、不思議と胸に残る。

「自覚はなくても、それは強みだ」

 なんて返せばいいのか分からなくて、私は視線を落とした。

「……ありがとうございます」

 会長は、それ以上深く踏み込まなかった。