鈍感な私は愛されヒロインです!?

「桜庭さん」

「はい」

「少し時間、もらえるかな」

 その言い方は、命令じゃなくてお願いに近かった。

「放課後、生徒会室に来てほしい」

「私……ですか?」

「うん」

 それから、桐谷くんを見る。

「君も一緒に」

 桐谷くんは一瞬驚いたけど、すぐに頷いた。

「はい」

 会長はそれだけ言って、廊下の向こうへ歩いていった。

 残された私たちは、顔を見合わせる。

「……生徒会室」

 なんだか、急に現実味がなくなる。

「だ、大丈夫ですよね?」

 桐谷くんが不安そうに聞く。

「たぶん」

 そう答えたけど、私も少し緊張していた。

 ――昨日の続きが、始まる。

 そんな予感がした。
 

 
 放課後の校舎は、昼間より少しだけ音が少ない。

 生徒会室は本館の奥にあって、普段あまり近づかない場所だ。
 ドアの前に立つだけで、なんとなく背筋が伸びる。

「どうぞ」

 中から聞こえた声に、桐谷くんが小さく息を吸ってからドアを開けた。

 生徒会室は、思っていたよりも静かだった。
 机が整然と並んでいて、窓際に立つ神楽坂会長が、こちらを振り返る。

「来てくれてありがとう」

 穏やかな声。

「座って」

 私と桐谷くんは、言われた通り椅子に座った。

 一瞬の沈黙。

 それを破ったのは、会長だった。

「昨日の件は、大事にならずに済んだ」

 淡々とした口調。

「でも、誤解が生まれたこと自体は、問題だと思っている」

 その視線が、桐谷くんに向く。