鈍感な私は愛されヒロインです!?

 事件が一段落した次の日。

 学校は、何事もなかったみたいにいつもの朝を迎えていた。
 昨日のざわつきが嘘みたいで、逆に少しだけ落ち着かない。

 教室に入ると、瀬名くんがいつも通りの調子で手を振ってきた。

「おはよ、ひより。今日は平和そうだね」

「ほんとに?」

「少なくとも、今日は呼び出されなさそう」

 そう言って笑うけど、どこか様子を見ている感じがする。

 黒崎くんは、相変わらず無愛想だけど、昨日ほどピリついてはいなかった。
 月城くんは、いつもより少しだけ周りを気にしている。

 ――でも。

 変わったのは、教室の外だった。

 休み時間、廊下に出ると、視線を感じる。

「……あ」

 声をかけられて振り返ると、見覚えのある一年生が立っていた。

「桜庭先輩」

 桐谷 蒼くん。

 昨日、廊下で話したあの子だ。

「おはよう」

「お、おはようございます」

 少し緊張した様子で、ぺこっと頭を下げる。

「昨日は……ありがとうございました」

「え?」

「僕、ちゃんと話せてよかったです」

 真っ直ぐな目。

 責めるでもなく、言い訳でもなく、ただ感謝だけを伝えに来た感じだった。

「こちらこそ」

 私は小さく笑った。

「勇気、出したね」

「……はい」

 その一言で、少しだけ表情が和らぐ。

 そこへ。

「桐谷くん」

 落ち着いた声が廊下に響いた。

 振り返ると、神楽坂会長が立っていた。

 昨日と同じ、整った制服姿。
 でも今日は、少しだけ柔らかい雰囲気に見える。

「先輩」

 桐谷くんは、すぐに背筋を伸ばした。

「昨日の件、その後どうかな」

「はい。先生にも、改めて話しました」

「そうか」

 会長は頷いてから、私の方を見る。