鈍感な私は愛されヒロインです!?

「桜庭さん、だね」

「はい」

「君が声をかけてくれて助かった」

 その言い方は、上からでも冷たくもなかった。

「問題が起きた時、一番大切なのは、早く正しく知ることだ」

 そう言ってから、廊下の向こうを見る。

「誤解は、ここで止めよう」

 その背中は、生徒会長って呼ばれる理由が分かるくらい、落ち着いて見えた。

 少し離れたところで、黒崎くんたちがこちらを見ている。

 目が合った。

 私は、小さく頷いた。


  教室に戻ると、外はもう薄暗くなっていた。

 机の上は朝のまま。
 誰も片づける余裕がなかったみたいだ。

「……終わった?」

 最初に声をかけてきたのは、瀬名くんだった。

「うん。一応」

「“一応”って言い方、気になるんだけど」

 でも、その顔は少しだけ安心しているように見えた。

 黒崎くんは、教室の後ろで壁にもたれていた。
 腕を組んで、視線は窓の外。

「黒崎くん」

 名前を呼ぶと、ゆっくりこちらを見る。

「……どうなった」

「目撃、はっきりしてなかったって」

 短く、でもちゃんと伝える。

「断定は、されなかった」

 一瞬、黒崎くんの表情が止まった。

「……そうか」

 それだけ言って、また視線を逸らす。

 でも、さっきより肩の力が抜けているのが分かった。