鈍感な私は愛されヒロインです!?

「遠くからでした。暗くて……顔までは、はっきり」

 やっぱり。

「黒崎くんだって、断定した?」

「……雰囲気が、似てて」

 その言い方が、すごく不安そうだった。

「ごめんなさい」

 急に、頭を下げられる。

「僕、誰かを悪くしたかったわけじゃなくて……」

「うん」

 私は首を振った。

「それ、ちゃんと伝えた方がいい」

 桐谷くんは、驚いたように顔を上げる。

「でも、生徒会の人、怖そうで……」

 その時だった。

「その話、もう一度聞かせてもらえるかな」

 落ち着いた声が、後ろから響いた。

 振り返ると、そこにいたのは――

 背筋の伸びた、長身の男子。
 制服の着こなしがやけにきれいで、周りの空気が少しだけ静まる。

「生徒会長の、神楽坂悠馬です」

 その名前を聞いた瞬間、桐谷くんが固まった。

「安心して」

 神楽坂会長は、穏やかに続ける。

「正確な話が聞きたいだけだ。責めるつもりはない」

 その一言で、桐谷くんの肩から力が抜けたのが分かった。

「……僕、見間違えたかもしれません」

 桐谷くんは、はっきり言った。

「黒崎先輩だって、確信はなかったです」

 神楽坂会長は、静かに頷く。

「ありがとう。大事なことだ」

 それから、私の方を見る。