鈍感な私は愛されヒロインです!?

「黒崎くん」

 思わず名前を呼んでしまった。

 視線が合う。

「……なに」

「その、聞き取り……」

「行くに決まってんだろ」

 投げやりな口調。

「逃げたって、余計怪しくなるだけだ」

 それは正論だったけど、どこか自分に言い聞かせているみたいにも聞こえた。

「俺も行きます」

 月城くんが静かに手を挙げる。

「昨日、体育館の前を通りました」

「お、じゃあ俺もだ」

 瀬名くんも続く。

「一人だけ行かせるの、感じ悪いし」

 三人の名前が呼ばれて、教室を出ていく。

 その背中を見送りながら、胸の奥がざわついた。

 私は、行く理由がない。

 なのに、取り残された感じがしてしまう。

 ――このまま、何もできないままなのかな。

 そう思った、その時。

「桜庭さん」

 担任に呼ばれて、びくっと肩が跳ねた。

「君も、少し話を聞かせてほしい」

「え、私も……?」

「昨日、放課後はどうしていた?」

 一瞬、言葉に詰まる。

「……家に、まっすぐ帰りました」

「そうか」

 先生は頷いて、メモを取る。

「念のためだ。すぐ終わる」

 私は小さく頷いた。