鈍感な私は愛されヒロインです!?

 教室に着くと、黒崎くんはすでに席に戻っていた。
 机に肘をついて、窓の外を見ている。

「……黒崎くん」

 声をかけようか迷っていると、向こうから視線が合った。

「何」

 短い返事。

「いや……」

 何て言えばいいのか分からなくて、言葉が止まる。

「別に」

 黒崎くんはそう言って、また視線を逸らした。

「気にすんな」

 それだけ。

 でも、その声は、いつもより少しだけ低かった。

 授業が始まっても、周りの視線は完全には消えなかった。

 前の席の子が、ちらっと振り返る。
 後ろの方で、ひそひそ話が止まらない。

 黒崎くんは、何も言わずに授業を受けている。
 でも、机の下で組まれた手に、力が入っているのが分かった。

 ――疑われるって、こういうことなんだ。

 理由がなくても。
 ちゃんと話を聞いてもらえなくても。

 ただ「そういうイメージ」だけで。

 胸の奥が、少し苦しくなった。