鈍感な私は愛されヒロインです!?

 一時間目は、正直ほとんど内容が頭に入ってこなかった。

 先生の声は聞こえているのに、ノートを取る手がどこか遅れる。
 黒板を見るたび、さっきの話が頭に戻ってきてしまう。

 ――体育館の備品が壊れた。
 ――このクラスの名前が挙がっている。

 休み時間のチャイムが鳴った瞬間、教室の空気が一気に緩んだ……かと思ったけど、いつもみたいな騒がしさはなかった。

「なあ、マジで何なんだよ」

 誰かが小さくぼやく。

「昨日、体育館行ったやつ誰だっけ?」

「部活のやつらじゃね?」

 ひそひそ声が飛び交う中、黒崎くんは椅子を後ろに引いて立ち上がった。

「……トイレ行ってくる」

 それだけ言って、教室を出ていく。

 その背中を、何人かが目で追った。

 私はなんとなく、嫌な予感がしていた。

 次の授業は移動教室だった。

 廊下に出ると、他のクラスの生徒たちとすれ違う。
 その中で、ふと聞こえてきた声に、足が止まりそうになった。

「問題児クラスらしいよ」

「え、やっぱり?」

「黒崎ってやつ、昨日体育館にいたって」

 ……名前、出た。

 心臓が、きゅっと縮む。

 前を歩いていた瀬名くんも、聞こえたらしく、少しだけ歩くスピードを落とした。

「噂回るの早すぎでしょ」

 小さく、でもはっきりした声。

 月城くんは何も言わなかったけど、表情が少しだけ硬い。