鈍感な私は愛されヒロインです!?

「ちょっと待てよ」

 低い声が教室に響いた。

 黒崎くんだった。

「俺らがやったって、決まったわけじゃねぇだろ」

 机に肘をついたまま、睨むように前を見る。

「決めつけてんのかよ」

 空気が、ぴりっとする。

「まだ決めつけてはいない」

 先生は落ち着いた声で続けた。

「だが、目撃情報がある以上、確認は必要だ」

「目撃情報?」

 今度は、月城くんが口を開いた。

「誰が、いつ、どこで見たんですか」

 感情を交えない、淡々とした声。

「時間帯も曖昧なままなら、証拠にはならないと思います」

 先生は一瞬、言葉に詰まった。

「……詳細はこれからだ」

 そのやり取りを、瀬名くんは黙って聞いていた。
 やがて、ふっと息を吐く。

「雑だなぁ」

 小さな声。
 でも、私にははっきり聞こえた。

 教室の空気は、完全に重くなっていた。

 なんで、このクラスってだけで。
 なんで、何もしてないのに。

 胸の奥が、じわっと嫌な感じで満たされる。

「今日は放課後まで、全員残ることになる」

 先生の言葉に、さらにざわめきが広がった。

 黒崎くんは舌打ちをして、視線を逸らす。
 月城くんは何か考えるように、静かに前を見つめている。

 瀬名くんは、ちらっと私の方を見た。

「……大丈夫?」

 小声でそう言われて、私は少しだけ救われた気がした。

「うん」

 そう答えたけど、本当は全然大丈夫じゃない。

 この日が、
 こんなふうに終わらないことだけは、なぜか分かっていた。