鈍感な私は愛されヒロインです!?

 その日の朝は、教室に入った瞬間から、いつもと空気が違っていた。

 ざわざわ、というより、ひそひそ。
 誰かが大きな声で騒ぐわけでもないのに、落ち着かない感じだけが広がっている。

「……なにかあったの?」

 小さく呟きながら席に向かうと、瀬名くんが珍しく真面目な顔で前を向いていた。

「おはよ、ひより」

「おはよう。ねえ、今日なんか静かじゃない?」

「まあね」

 それだけ言って、前を向く。
 軽い調子だけど、いつもより言葉が少ない。

 席に座った直後、教室のドアが開いた。

「全員、席につけ」

 担任の声に、空気が一気に張りつめる。

 先生は教卓の前に立つと、クラス全体を見渡した。
 その視線が、ほんの一瞬、黒崎くんの方に向いた気がした。

「今朝、体育館の備品が壊れているのが見つかった」

周囲がざわつき始める。

「詳しい状況は調査中だが――昨日の放課後、体育館付近にいた生徒の中に、このクラスの名前が挙がっている」

 ……え。

 一瞬、意味が分からなかった。

 このクラス、って。
 名前が挙がってる、って。

 周りを見ると、みんな同じ顔をしている。
 驚きと、納得できない気持ちが混ざった表情。